周産期心筋症(peripartum cardiomyopathy:PPCM)は心疾患の既往のない妊産婦に心不全を呈する疾患である.妊娠高血圧症候群に合併したPPCMの2例を報告する.症例1:34歳,14妊8産,喫煙者.36週3日に妊娠高血圧腎症と診断されたが,本人希望で帰宅した.翌日呼吸苦で救急搬送され,胸部レントゲンで心拡大と肺水腫を認め緊急帝王切開を行った.術後,心臓超音波で左室駆出率32%の左室壁運動低下を認め,PPCMによる急性心不全と診断した.心機能は改善し産褥11日で退院した.症例2:41歳,1妊0産.29週から37週の間で13.4 kgの体重増加と浮腫を認めた.37週2日高血圧を認め妊娠高血圧症候群と診断した.翌日から分娩誘発したが不応で退院した.39週0日自然陣痛発来したが,胎児機能不全のため緊急帝王切開を行った.術後1日目に重症域高血圧を認め硫酸マグネシウムを投与した後,SpO2低下,胸部レントゲンで心拡大と胸水貯留,心臓超音波で左室の壁運動低下を認め,PPCMによる急性心不全と診断した.心機能は改善し産褥15日で退院した.妊娠中の体重増加,浮腫,息切れなどは健常妊婦でも自覚するため,PPCMの診断は遅れがちである.疑わしい症状を認める場合はPPCMを鑑別に挙げ,心機能を評価することが重要である.
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