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第62巻 第4号

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症例報告
初発症状が口渇・多飲多尿であった急性妊娠脂肪肝の2例
野村 明日香1)2), 布施谷 千穂1), 杉山 結理佳1), 平林 瞭1), 横川 裕亮1), 田中 泰裕1), 小野 元紀1), 安藤 大史1), 浅香 亮一1), 菊地 範彦1), 宮本 強1), 塩沢 丹里1)
1)信州大学医学部産科婦人科学教室
2)飯田市立病院産婦人科
関東連合産科婦人科学会誌, 62(4):468-475, 2025
https://doi.org/10.60311/kjog.62-4.468

 急性妊娠脂肪肝(acute fatty liver of pregnancy;以下AFLP)は妊娠後期に発症し,肝不全,腎不全,播種性血管内凝固症候群へ進行する母児共に死亡率の高い疾患である.初発症状は嘔気嘔吐や腹痛が多いが,口渇と多飲多尿が初発症状であったAFLPを2例経験したため報告する.
 症例1:28歳の1回経産婦で,妊娠34週に口渇と多飲多尿を自覚した.その後に上腹部痛と嘔気が出現したため,妊娠35週1日に前医を受診したところ,肝障害と腎障害がみられ当科へ母体搬送された.HELLP症候群の基準は満たさず,Swansea diagnostic criteriaの7項目を満たしたため臨床的AFLPと診断し,妊娠35週3日に緊急帝王切開術を施行した.児は1,766 gの男児で小児科入院となった.分娩後は肝障害の回復に伴い症状は改善し,術後10日目に退院した.
 症例2:29歳の初産婦で,妊娠34週に口渇と多飲多尿を自覚した.その後に上腹部痛と嘔気が出現したため,妊娠35週0日に前医を受診したところ,肝障害と腎障害がみられ当科へ母体搬送された.HELLP症候群の基準は満たさず,Swansea diagnostic criteriaの6項目を満たしたため臨床的AFLPと診断され,同日に緊急帝王切開術を施行した.児は1,526 gの男児で小児科入院となった.分娩後は肝障害の回復に伴い症状は改善し,術後9日目に退院した.
 AFLPは,肝障害により抗利尿ホルモンを分解するvasopressinaseの代謝不全が生じることで尿崩症を呈する.妊娠後期に口渇・多飲多尿をきたした際は,肝障害を伴っている可能性があり,AFLPを鑑別する必要があると考えられた.

Key words:Dry mouth, Polydipsia, Polyuria, Acute fatty liver of pregnancy
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