子宮頸癌の根治的放射線治療は外照射と小線源治療からなるが,隣接臓器への障害が問題となる.強度変調放射線治療(intensity-modulated radiation therapy:IMRT)や画像誘導小線源治療(image-guided brachytherapy:IGBT)などでリスク臓器への線量低減がはかられている.小腸は放射線感受性が高く,高線量被曝により放射線性小腸炎を引き起こす可能性が高いが,通常は可動性に富むため重症な小腸炎は来しにくい.しかし,何らかの理由で癒着し照射野内にかかる場合には重篤な合併症が起こりうる.本症例は,潰瘍性大腸炎により全結腸切除を受けた76歳子宮頸癌FIGOステージIIA1の患者で,照射前に吸収性組織スペーサー(ネスキープ)を留置し小腸と腫瘍の距離を確保し,放射線治療を実施した.
治療中にスペーサー接触部の腟後壁に瘻孔形成を認めたが,線量調整と適切な全身管理により治療を完遂し,完全寛解が得られ,晩期障害も認められなかった.
吸収性組織スペーサーを腹腔鏡下で低侵襲に挿入することで速やかに治療開始が可能となり,耐容線量の低い臓器への線量を軽減し,標的病変への高線量を維持できた.本症例のような癒着により小腸が照射野内に位置する場合や,再発や残存腫瘍などにおいて腸管線量低減が必要な患者などでの応用も今後期待される.
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