【緒言】
高安動脈炎は大動脈及びその分枝,肺動脈,冠動脈に炎症性壁肥厚をきたし,血管の狭窄,閉塞または拡張病変をきたす非特異的炎症性疾患である.今回,妊娠成立後に両側総頸動脈の高度狭窄を伴う高安動脈炎と診断し,周産期管理を行った症例を経験したので報告する.
【症例】
33歳.G4P1.人工授精で妊娠成立し,妊娠7週の妊婦健診で両上肢血圧が測定不能かつ,両側橈骨動脈および上腕動脈の拍動を触知しなかった.左内頸動脈に血管雑音,頸動脈超音波断層法で両側頸動脈に血管壁肥厚を認め,妊娠16週時に高安動脈炎と診断し,妊娠17週時にステロイド及びアスピリンの投与を開始した.ステロイド抵抗性であり,TNFα阻害薬及びアザチオプリンを追加し,速やかに炎症反応は低下した.妊娠36週に前期破水し,胎児機能不全のため緊急帝王切開とした.児は女児,2,100 g,Apgar score 8/9点(1/5分値),明らかな外表奇形なく,母児ともに術後経過良好で術後6日目に退院とした.
【結語】
今回我々は妊娠成立後に高安動脈炎と診断し,周産期管理を行った症例を経験した.診断後早期にステロイド及びアスピリン投与を開始し,ステロイド抵抗性に対してTNFα阻害薬とアザチオプリンを追加投与したことにより,両側総頸動脈の高度狭窄を伴っていたが36週まで妊娠継続を可能とし,母児ともに良好な周産期転機が得られた.
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