今回我々は,子宮内腔に外向性に発育した子宮体部類内膜癌による子宮内反症をきたし,その手術経過で手技的に難渋した症例を経験したので報告する.
症例は72歳,2妊2産.断続的な不正出血による貧血と軽度の下腹部痛を主訴に当科紹介初診した.腟鏡診にて腟内に充満する易出血性の腫瘍を認めた.内診上,子宮腟部・体部は正常に触知した.腫瘍生検の結果より子宮体部類内膜癌Grade 2と診断し手術の方針となった.骨盤MRI検査で腫瘍による子宮内反を認めた.
開腹時,子宮は術前の予想通り完全に内反しており,円靱帯は陥凹部に埋没し膀胱子宮窩腹膜は視認できなかった.卵管・卵巣固有靱帯も同様であり,卵巣は陥凹部に近い位置に偏移していた.内反の用手整復を試みたが困難であり,骨盤漏斗靱帯のみを処理したのち,子宮全摘に先立ち腟側より腫瘍を減量する方針とした.腟内の腫瘍を可及的に摘出し,子宮底部も一部切除される形となった.この時点で内反を解除できたため,以降は通常通り経腹からの手術手技により子宮を摘出した.腟式での腫瘍摘出時の出血が多く術中術後の輸血を要した.
術後,再発中リスク群と考え化学療法を施行したが,副作用のため本人希望で1サイクルのみで終了した.
子宮内反を呈した子宮の摘出に関しては十分な術前検査と慎重な準備が重要であるとともに,既報の症例同様,内反の程度により術中にも術式の臨機応変な変更を求められる.
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