妊娠中に原発性副甲状腺機能亢進症(primary hyperparathyroidism:PHPT)と診断される頻度は低く,3rd trimesterで発見された報告は少ない.今回我々は3rd trimesterにPHPTと診断され,保存的治療で周産期管理を施行した1例を経験した.
症例は33歳,1妊0産.学童期より口渇と多飲の自覚があったが精査を行っていなかった.妊娠33週0日に高血圧合併妊娠の診断で当院を紹介受診した.初診時,収縮期血圧が重症域であり,精査を実施した.血液検査は高Ca血症,低P血症,intact PTHが高値であった.甲状腺超音波検査は甲状腺左葉に副甲状腺腫を疑う所見があり,PHPTと診断した.3rd trimesterであり各診療科で協議し保存的治療を行った.補液と利尿薬により,血清Ca値は速やかに低下したが,頻回の血液検査や尿量管理が必要な長期の入院を要した.一方,妊娠経過は良好で妊娠39週3日に分娩に至った.児に低Ca血症は認めなかった.産後5か月目に他院で副甲状腺摘出術を施行された.
3rd trimesterに診断されたPHPT合併妊娠について治療方針は確立されていないが,本症例を通じて保存的治療は患者負担が大きいことがわかった.近年,3rd trimesterで副甲状腺摘出術を行った症例報告が散見される.保存的治療を行ってもコントロール不良の症例や,保存的治療でコントロールが良好であっても患者負担が大きい場合は副甲状腺摘出術を検討すべきである.
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