コンパートメント症候群は筋膜と骨に囲まれた区域の内圧が上昇し循環障害や神経障害をきたす疾患である.今回,全腹腔鏡下単純子宮全摘術後に下腿コンパートメント症候群を発症した1例を経験した.
症例は48歳0妊0産.腹部腫瘤感を主訴に受診し,多発子宮筋腫,両側卵巣内膜症性囊胞,右卵管留血症を指摘された.開腹移行の可能性から全身麻酔に硬膜外麻酔を併用し全腹腔鏡下単純子宮全摘,両側付属器摘出術が施行された.砕石位,頭低位により手術を開始し,頭低位と頭高位を数回繰り返し腹腔内を洗浄した.高度な癒着を認めたが腹腔鏡手術で終了した.手術時間4時間12分,出血500 gであった.術後4時間より下腿の痺れが出現,硬膜外麻酔の投与を中止したが改善せず,下腿の腫脹・疼痛とCK 22,955 IU/L,ミオグロビン尿を認め,コンパートメント症候群が疑われた.整形外科医にて両下腿の圧測定を行い,術後15時間後に左下腿を減張切開した.術後4日目よりリハビリを開始,術後11日目より局所陰圧閉鎖療法を行い,術後15日目に杖歩行で自宅退院した.
複数の医師の体位確認の上で手術を開始したがコンパートメント症候群を発症した.BMIや手術時間に加え,弾性ストッキングと間欠的空気圧迫装置の使用,砕石位・術中体位変換時のずれが発症リスク因子の一つとなった可能性がある.術後の注意深い観察による早期介入の重要性が示唆された.
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