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第62巻 第4号

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症例報告
前置血管の診断後に異なる分娩経過に至った2例
穗積 史也, 島田 智子, 田嶋 敦, 造賀 浩美, 縣 博也, 阪口 響子, 石川 美佳, 戸田 友美, 松島 実穂, 谷垣 伸治, 小林 陽一
杏林大学医学部産科婦人科学教室
関東連合産科婦人科学会誌, 62(4):546-550, 2025
https://doi.org/10.60311/kjog.62-4.546

 前置血管は臍帯血管の圧迫や破水時の臍帯血管の破綻による胎児機能不全や胎児死亡のリスクが高いため,分娩前の診断,帝王切開術での分娩が重要であるが,経過中に臍帯血管が内子宮口から離れることで経腟分娩が可能となる場合がある.今回我々は前置血管の診断後に,前置血管の消失の有無により異なる分娩様式に至った2例を経験したので報告する.
 症例1は33歳,2妊1産,自然妊娠成立し妊娠10週2日に当院紹介となり,妊娠21週3日の経腟超音波で前置血管と診断した.その後も状態に変化を認めず妊娠37週3日に選択的帝王切開術を施行し,術後の胎盤所見は臍帯卵膜付着であり前置血管と考えられた.
 症例2は32歳,2妊1産,凍結胚盤胞移植で妊娠成立し妊娠30週健診時に前置血管の診断となり妊娠30週6日に当院紹介となった.初診時の経腟超音波で内子宮口から約2 cm離れた血管の走行を認め,前置血管の診断に矛盾しないと考えたが,妊娠36週6日時点で明らかな前置血管が確認出来なくなったため経腟分娩が可能と判断し妊娠39週0日に経腟分娩となった.
 2例を比較検討すると妊娠30週頃で臍帯血管と内子宮口の距離に差を認めており,前置血管消失の因子として関連が考えられた.過去にも前置血管の解消により経腟分娩に至った症例が報告されており,診断後も経時的な観察による適切な分娩様式の決定が重要となる.

Key words:vasa previa, cesarean delivery, vaginal delivery
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