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第62巻 第4号

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症例報告
高度の腰背部痛をきたしたMassive ovarian edemaの1例
植木 雅子1), 大平 哲史1), 北野 伶佳1), 横井 由里子1), 田中 恭子1), 林 晶子1), 北村 文明1), 小林 実喜子2)
1)丸の内病院産婦人科
2)丸の内病院病理診断科
関東連合産科婦人科学会誌, 62(4):551-557, 2025
https://doi.org/10.60311/kjog.62-4.551

 Massive ovarian edema(MOE)は片側性に腫瘍類似の卵巣腫大をきたす稀な病態で,卵巣間質への浮腫液の多量蓄積に起因する非腫瘍性病変である.発生機序として卵巣捻転によるリンパ還流・静脈還流うっ滞が一因と考えられている.今回我々は高度の腰背部痛をきたしたMOEの1例を経験した.症例は37歳,0妊,特に誘因はなく右腰背部痛が出現し,前医でのCTで尿管結石は認めず,右卵巣の腫大が疑われたため当科に紹介となった.来院時はあたかも尿管結石を思わせるような右腰背部の疝痛であったが,下腹部痛は認めなかった.MRIで右卵巣は長径6 cmで浮腫状に腫大しており,MOEと考えられた.間欠的な高度の右腰背部痛が持続するため腹腔鏡手術を行った.右付属器に明らかな捻転の所見は認められなかったが,右卵管が浮腫状であったため右付属器が不完全な捻転を繰り返していたことが示唆された.保存的処置のみでは疼痛の持続や再発が危惧されたため,腹腔鏡補助下右付属器摘出術を行った.病理組織学的に右卵巣は浮腫・うっ血のみられる卵巣組織であり,MOEと診断した.原発性MOEは国内で49例が報告されているが,その多くは下腹部痛で発症している.ゆえに本症例は高度の腰背部痛をきたした稀な症例であった.MOEは症例集積が進みつつあるが,今後は患側付属器を温存した場合の再発予防法など,治療指針のさらなる確立が望まれる.

Key words:Massive ovarian edema, Low back pain, Surgery, Adnexectomy
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