予定帝王切開術後の経腟診察が契機となり巨大な腟壁・外陰血腫を合併した一例を経験した.腟壁・外陰血腫は経腟分娩や外傷において頻繁に遭遇する合併症の一つであるが,経腟診察の合併症としての報告はない.症例は35歳,7妊5産,前3回帝王切開既往があり,妊娠30週時に肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症を発症し抗凝固療法を開始した.37週時に予定帝王切開を行った.産褥1日目に抗凝固療法(ヘパリン持続静注)を再開した.産褥2日目の深夜に下腹部痛の訴えがあったため経腹および経腟的な診察を実施したが,明らかな異常所見を認めず,経過観察とした.診察から約6時間後に頻脈と血圧低下が出現したため再度診察を行うと,7 cm大の外陰血腫を認めた.造影CT所見では,血腫は右腟壁から後腹膜に至り,右腎下極まで達していた.血管造影検査で右内陰部動脈が責任血管と診断され,経カテーテル的動脈塞栓術を行った後に経腟的に血腫除去術を行った.抗凝固療法は血腫形成・増大のリスクであり,帝王切開術後でも経腟診察が粗大な血腫を形成する原因となる可能性がある.
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