【目的】広汎子宮頸部摘出術(radical trachelectomy:RT)は,妊孕性温存を希望する初期浸潤子宮頸癌患者に対して施行される術式である.RT施行後の再発率,再発因子に関する報告は限定的であり,本研究では当科でRTを施行した症例の再発形式・臨床病理学的因子の検討と,広汎子宮全摘出術(radical hysterectomy:RH)との腫瘍学的予後の比較を行うことを目的とした.
【方法】2002年9月から2022年12月に当院でRTを施行した319例と,同時期にRHを施行した臨床進行期(FIGO2008)IA1期からIB1期の629例を対象とし,RT症例の再発率,再発に関わる臨床病理学的因子を解析するとともに,傾向スコアマッチングを用いてRT群の腫瘍学的予後,再発部位をRH群と比較して後方視的に検討した.
【成績】RTを施行した319例のうち,再発を認めたのは19例(6.0%)であった.RT群とRH群の年齢,臨床進行期,組織型,腫瘍径,浸潤の深さ,脈管侵襲の有無の6因子を揃えて傾向スコアマッチングを行ったところ,両群の無増悪生存期間に有意差はなかった(p=0.560).マッチング後の集団におけるRT症例の再発部位をRH症例と比較したところ,局所再発は2例(22.2%)vs 1例(11.1%)(p=1.000)と有意差はなく,RT症例における再発部位は骨盤リンパ節転移が5例(55.6%)と最多であった.RT症例の再発因子としては,再発あり群と再発なし群を比較して腫瘍径,間質浸潤の深さ,骨盤リンパ節転移の3項目で統計学的に有意差を認めた.
【結論】RTとRHで再発率・無増悪生存率における有意差は認めず,RTにおける再発因子として腫瘍径,間質浸潤の深さ,リンパ節転移が抽出された.
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