妊娠高血圧症候群(HDP)と診断された妊婦の分娩誘発における硬膜外麻酔併用の有効性と安全性について検討した.本研究は2015年4月~2021年12月に当院で管理したHDP単胎妊婦143例を対象とし,硬膜外麻酔群(61例)と非併用群(82例)で周産期転帰を後ろ向きに比較した.多変量解析において,硬膜外麻酔は緊急帝王切開の発生を有意に抑制する独立因子(OR 0.42,95%CI 0.18~0.97)として抽出された.硬膜外麻酔群で吸引・鉗子分娩の割合は増加した.一方,分娩時出血量,新生児Apgarスコア,臍帯動脈pH,NICU入室率などの母児アウトカムに有意差は認められなかった.硬膜外麻酔は疼痛緩和と血圧制御を介して分娩進行を促進し得る一方,鎮痛レベルに応じたいきみ低下を補う管理が求められる.HDP発症症例において,硬膜外麻酔は周産期予後を大きく損なうことなく緊急帝王切開率を低減し得る有用な戦略と考えられた.本研究の限界として,単施設後ろ向きデザインであり症例数が限定的な点が挙げられる.今後,重症度や麻酔プロトコールを統制した大規模試験が必要とされる.本成果はHDP管理における硬膜外麻酔の意義を再評価する知見となりえる.
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