子宮留膿腫は全婦人科患者の0.01～0.5％の発症頻度とされているが，子宮穿孔を来す症例は稀である^1）．今回子宮留膿腫から子宮穿孔を来した子宮頸癌の一例を経験したので報告する．症例は80歳，2経産婦．2か月前より不正性器出血を認め，当科を受診した．子宮頸部は腫瘍で置換され，組織診は扁平上皮癌であった．診察及び画像所見より子宮頸癌Stage IVB（cT3aN1M1）と診断し，また子宮留膿腫も認めた．根治的治療の希望なく，止血目的に骨盤外照射の方針とした．入院11日目（計6 Gy照射後）に下腹部痛と40度台の発熱あり，腹膜刺激徴候も認めた．血液検査は白血球19,880/μL, CRP 8.30 mg/dlと上昇を認めた．造影CTを施行し腸穿孔や腸虚血の所見はなく，子宮留膿腫の増悪を認めた．放射線療法を中止し，抗生剤を開始した．入院12日目に血圧低下，末梢冷感，尿量低下を認めた．CRPは17.46 mg/dlと上昇し腎機能低下と血小板減少傾向を認めた．経腹エコーで子宮内腔体積の減少，子宮周囲の腹水増加を認め，子宮留膿腫の穿孔に伴う敗血症性ショックを疑った．開腹のリスクを考慮して保存的治療とし，抗生剤の変更や免疫グロブリン投与を行った．入院13日目朝より全身状態が増悪し，死亡した．血液培養からはBacteroides thetaiotaomicronを検出した．