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第51巻 第4号

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症例報告
妊娠32週に下肢の表在静脈に血栓症を発症した一例
安藤 歩1), 大熊 克彰1), 波多野 美穂1), 杉下 陽堂1), 鈴木 直2), 田中 守2)
1)川崎市立多摩病院産婦人科
2)聖マリアンナ医科大学病院産婦人科
関東連合産科婦人科学会誌, 51(4):549-554, 2014

 下肢静脈瘤は30代から40代の女性に好発し,その50%が妊娠中から分娩にかけて発症するといわれている.また本疾患が直接的に母体や胎児に影響を及ぼすことは少ないためマイナートラブルとして扱われている.妊婦の下肢静脈瘤からの表在静脈血栓症に対してヘパリンによる抗凝固治療を施行した症例を経験した.症例は40歳,3経妊2経産.妊娠19週頃から下肢静脈瘤に対して弾性ストッキング装着による圧迫療法をしていたが,妊娠32週に下肢静脈瘤の疼痛・浮腫を主訴に来院し,表在性静脈血栓症と診断した.入院管理とし,ヘパリンによる抗凝固療法にて速やかに疼痛は消失し,浮腫も軽減した.治療開始後約3週間で血栓は器質化したため,再発予防と肺血栓塞栓症予防のためヘパリンカルシウム製剤の皮下注射に切り替え,その後再発なく経腟分娩に至った.
 妊婦時静脈瘤の発生頻度は10~20%であり,発症には個人差がみられ,経産婦のほうが発症しやすいなど体質的な素因も関与しているものと考える.また,下肢静脈瘤の増悪は,表在性静脈血栓症(血栓性静脈炎),壊死や潰瘍を起こしうる.本邦では妊婦の下肢静脈瘤からの表在静脈血栓症の報告はほとんどなく,海外の文献6)では,妊婦の下肢静脈瘤からの表在性静脈血栓症は0.04%との報告がある.非常にまれではあるが,肺血栓塞栓症を合併することがある.

Key words:varicose vein, superficial thrombophlebitis, onset during late pregnancy
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