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第51巻 第4号

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症例報告
フォンダパリヌクスが血栓症の治療に奏功した静脈血栓塞栓症合併巨大子宮筋腫の1例
玉井 はるな, 高野 克己, 岡崎 有香, 志鎌 あゆみ, 櫻井 学, 沖 明典
茨城県立中央病院婦人科
関東連合産科婦人科学会誌, 51(4):569-575, 2014

 婦人科腫瘍において静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism:VTE)が初回治療開始前から存在することが知られ,スクリーニングおよび対策の重要性が指摘されている.今回,重症貧血を伴う巨大子宮筋腫に発症したVTEに対して性器出血の止血と抗凝固療法の両立に苦慮するも,新規にVTE治療に適用追加となったフォンダパリヌクスを使用し奏功した症例を報告する.
 症例は43歳の未経妊婦人.重症貧血と巨大下腹部腫瘤にて紹介となった.MRIで巨大子宮筋腫を認め,過長・過多月経による重症貧血と診断し,入院管理とした.入院時血清D-dimer値の高値があり,下肢血管超音波検査で左ヒラメ筋静脈に器質化血栓を認めた.胸部CTで両側末梢の多発肺塞栓(Pulmonary embolism:PE)を認めた.無症候性PEであり,下肢の血栓が器質化していたため,今後重篤なPEを併発する可能性は低いと考え,貧血治療と抗凝固療法を子宮筋腫治療に先行させた.抗凝固療法薬として持続点滴が不要で治療導入が容易であるフォンダパリヌクスを使用した.子宮筋腫に対する治療は,大量出血時には子宮動脈塞栓術で対応することとし,GnRH agonist(GnRHa)を開始して,待機手術の方針とした.フォンダパリヌクスは21日間投与し,GnRHa投与後月経が過多でないことと貧血の改善を確認してから外来管理とした.GnRHa6回の投与と鉄剤投与で,貧血も改善したため,腹式単純子宮全摘術を施行した.周術期から術後1年5か月経過した現在もワルファリンカリウムの内服を継続しVTEの再発なく経過している.
 結論:最近,ピルによる血栓症の死亡例も報告された.日常診療でよく目にする子宮筋腫であっても,大きさや可動性によってはVTEの発症を念頭に置くことが肝要である.

Key words:deep vein thrombosis, pulmonary thromboembolism, uterine myoma, Fondaparinux
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