胎児診断，出生前からの治療計画により救命できた動脈管狭窄，卵円孔狭窄を伴う完全大血管転位症（TGA）1型の1例を報告する．母体は32歳，1回経妊1回経産の女性で，32週まで別のクリニックで妊婦健診を受けていた．32週から腹痛と発熱があり，前医に入院した．前医の胎児スクリーニングでThree Vessel View（3VV）の異常を指摘され当院に紹介された．精査の結果，TGA 1型，動脈管狭窄，卵円孔狭窄と診断した．前回帝王切開であること，ハイリスクのTGAであることを考慮し，予定帝王切開の方針とした．出生直後に急激に状態が悪化し，緊急の治療が予想されたため，出生前に治療計画を作成し，関係者で共有した．38週2日，出生体重3,571 g，アプガールスコアー1分8点，5分8点．臍帯血PH 7.288 BE－3.9と新生児仮死は認めなかった．出生直後から高度のチアノーゼがあり,気管内挿管および100％酸素による人工換気，Lipo PGE1, NO吸入療法，バルーン心房中隔裂開術（BAS）により酸素化が改善し，日齢3に大血管のスイッチ手術（Jatene手術）を施行した．術後経過は順調で，術後14日で退院，正常範囲の発達を遂げている．