病理組織学的に完全な腸管構造を有した卵巣嚢胞性成熟奇形腫の一例を経験したので報告する.症例は20歳,0経妊0経産,嘔気と腹痛を主訴に受診した.CT検査で,骨盤底から上腹部を占拠する両側卵巣腫瘍と腹水,腹腔内に少量の脂肪組織を認めたため,卵巣腫瘍破裂の疑いで腹腔鏡補助下両側卵巣腫瘍摘出術を施行した.両側卵巣腫瘍の内容物はともに毛髪,皮膚,脂肪組織であったが,左卵巣腫瘍内には20 cm程の両側盲端の腸管様構造物を認めた.病理組織学的検査で,この管状構造物は角化扁平上皮,筋板,粘膜下層,固有筋層を備えたほぼ完全な腸管構造であった.粘膜の大部分は大腸類似であったが,これに連続して完全な胃底腺粘膜も認められた.卵巣成熟嚢胞性奇形腫に腸管構造を有した報告例は少ないが,消化管の中では,小腸と大腸が最も多く報告されていた.本症例は大腸類似の腸管構造に加え,胃底腺粘膜も認められた稀な症例であった.
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