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第52巻 第1号

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症例報告
子宮内膜症性卵巣嚢胞の茎捻転に,鼠径ヘルニア嵌頓による続発性大網捻転症を伴った1例
竹島 絹子, 天神林 友梨, 兒玉 理, 中村 佳子, 漆川 邦, 山田 直樹, 藤木 豊
水戸済生会総合病院総合周産期母子医療センター産婦人科
関東連合産科婦人科学会誌, 52(1):97-101, 2015

 女性の急性腹症において,卵巣嚢胞茎捻転は日常臨床で度々経験するが,大網捻転症を合併することは稀である.今回我々は,子宮内膜症性卵巣嚢胞茎捻転に大網の鼠径ヘルニア嵌頓,大網捻転症を伴った1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.
 症例は50歳,左下腹痛を主訴に当科を受診した.最初は卵巣嚢胞茎捻転,子宮付属器炎によると考えられた.しかし,骨盤MRI検査で子宮内膜症性卵巣嚢胞を認めるとともに,左下腹部に渦巻状の層構造を呈する腫瘤が左鼠径ヘルニア嚢へ連続していることから,左鼠径ヘルニア嵌頓による続発性大網捻転症も併せて診断された.外科コンサルトの上,手術を施行した.左卵巣嚢胞は子宮右側に偏位し,時計方向に180度茎捻転しており,軽度のうっ血を認めた.この左卵巣嚢胞を包み込むように大網が一部強固に癒着しており,その大網末梢部が索状となり尾側より見て時計方向に3回捻転して左鼠径管のヘルニア嚢に嵌頓癒着していた.捻転部より末梢側の大網が虚血壊死に至っており,この大網を部分切除した.左鼠径ヘルニアについてはヘルニア門縫縮術を施行した.本症例は術前にMRI検査を施行することにより,子宮内膜症性卵巣嚢胞に加え,鼠径ヘルニア・大網捻転症の術前診断が可能であった.

Key words:torsion of ovarian cyst, secondary omental torsion, inguinal hernia, case report
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