卵巣癌乳腺転移は稀な病態である.乳腺悪性腫瘍のうち転移性乳腺腫瘍は1%未満であり,原発巣は様々あるが中でも卵巣癌の乳腺転移は少なく,転移性乳腺腫瘍の0.5%未満であると報告されている1).
今回卵巣癌乳腺転移と診断した症例を経験したので報告する.
症例は53歳1経妊1経産.右卵巣癌に対し右付属器摘出術・大網切除術・虫垂切除術・回腸人工肛門造設術を施行した.卵巣癌Stage IIIc(pT3cN1M0,漿液性腺癌と類内膜腺癌の混合腫瘍)と診断し,残存腫瘍に対し化学療法を施行した.術後17か月左乳房のしこりを自覚した.左乳房C領域に腫瘤を認め,乳腺腫瘍の針生検の病理検査で腺癌が認められた.組織学的に卵巣癌との類似性があり,免疫組織化学でも両者の免疫染色結果は一致し,卵巣癌の乳腺転移と診断した.その後も化学療法を継続したが,乳腺転移診断後5か月で死亡した.
卵巣癌乳腺転移は,画像検査のみで診断することは困難で,免疫染色を含めた病理組織学的検査が極めて重要である.乳腺転移の病理組織型は漿液性腺癌の報告が多い.また,転移が発覚してからの生存期間が短い報告が多く,原発性乳癌と治療が異なるため鑑別が重要となる.乳腺転移の効果的なスクリーニングプログラムがないため,自己乳房視触診の教育をすることや,乳房腫瘤の有無等を傾聴することで早期発見につながり,適切な治療方針を得られる可能性がある.
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