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第52巻 第4号

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症例報告
Methotrexate(MTX)の全身投与が有用であった帝王切開瘢痕部妊娠の1症例
夏山 貴博, 宮本 守員, 渋谷 剛志, 松浦 寛子, 曽山 浩明, 吉永 洋輔, 笹 秀典, 古谷 健一
防衛医科大学校産科婦人科
関東連合産科婦人科学会誌, 52(4):687-691, 2015

 帝王切開瘢痕部妊娠(瘢痕部妊娠)に対して,手術療法,メソトレキセート(MTX)を用いた全身投与または局所投与,子宮動脈塞栓術が有効とされるが確立された治療法はない.今回,MTX全身投与が奏功した帝王切開瘢痕部妊娠症例を経験したので報告する.34歳女性,4経妊3経産.3回帝王切開の既往あり.不正性器出血を主訴に来院.経腟超音波及びMRIで瘢痕部に胎嚢を認め瘢痕部妊娠と診断した.患者本人及び家族が,妊孕性の温存及び非侵襲的な治療を望んでおり,MTX全身投与(MTX20 mg/m2点滴静注5日間)を開始した.治療開始時のヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)値は102,371 IU/lだった.MTX 10コース施行後の造影MRIでT2W1高信号域や異常造影効果を示す像は消失したが,hCG 10.3 IU/lと軽度陽性であったため,MTX1コースを追加しhCG値が陰転化した.経過中MTX6コース中に,AST51,ALT107と軽度肝機能障害,10コース目に軽度の吐気により治療を延期し,大きな合併症なく治療を完遂することができた.本症例のようにhCG値に関わらず,胎芽を認めず胎嚢のみの症例ではMTX全身投与で治療が完遂できているという報告もある.しかし治療期間が長いという欠点を有する.今後も症例を蓄積し,適切な症例に,適切な治療を行えるように検討する必要がある.

Key words:Cesarean scar pregnancy, Methotrexate(MTX)
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