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第52巻 第4号

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症例報告
トルソー症候群をきたし,ワルファリンが無効であった子宮頸部腺癌の一例
市川 良太1), 新井 ゆう子1), 大坪 保雄1), 坂中 都子1), 西田 正人1), 近藤 譲2)
1)独立行政法人国立病院機構霞ヶ浦医療センター産婦人科
2)独立行政法人国立病院機構霞ヶ浦医療センター病理診断科
関東連合産科婦人科学会誌, 52(4):711-717, 2015

 悪性腫瘍に合併する血栓症や脳梗塞などの合併症を指してトルソー症候群という.今回我々は,進行子宮頸部腺癌に下肢静脈血栓症を合併しトルソー症候群と診断した症例を経験した.化学療法と並行してヘパリン持続点滴を開始し下肢静脈血栓症は軽快したが,ワルファリン内服に切り替えたところD-ダイマーが再上昇し遊走性血栓静脈炎を発症した.これらはヘパリン持続点滴の再開で軽快したことから,トルソー症候群の治療におけるヘパリンの優位性を認識させられた.術後,未分画ヘパリンの自己皮下注射を導入し,外来管理に移行出来た.
 担癌患者において腫瘍細胞が凝固系を活性化させる機序は,(1)腫瘍で産生されたムチンが血小板や血管内皮と結合する,(2)腫瘍で産生されたTissue Factorが外因系の凝固機序を活性化させる,(3)腫瘍で産生されたサイトカインが血小板・血管内皮の接着分子を活性化させる等多岐にわたるが,ヘパリンはこれら全てを抑制させる作用を持つとされる.本症例においてヘパリン持続点滴をワルファリン内服に切り替えられなかった理由もその点にある.以上より,トルソー症候群には,ワルファリンではコントロールが困難な症例が一部存在し,その場合はヘパリンでの管理が望ましいと考えた.
 副作用の少なさと予後改善効果から低分子ヘパリンが欧米では推奨されているが,本邦では担癌患者の凝固亢進状態に対する保険適用はまだなく,今後の検討が待たれる.

Key words:uterine cervix, Trousseau's syndrome, cervical adenocarcinoma
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