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第52巻 第4号

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症例報告
10年以上に亘る子宮内避妊具の留置により骨盤内炎症性疾患を発症し直腸穿孔を惹起した1例
田川 実紀, 吉田 智香子, 野中 宏亮, 柿沼 敏行, 松田 義雄, 大和田 倫孝
国際医療福祉大学病院産婦人科
関東連合産科婦人科学会誌, 52(4):783-787, 2015

 子宮内避妊具(IUD)の長期留置は骨盤内炎症性疾患(PID)を発症し得るが,消化管穿孔を惹起することは稀である.我々は直腸穿孔のため人工肛門を造設した症例を経験した.
 年齢は41歳で,1週間前より下腹痛と発熱があるため当院を受診した.内診では右付属器に鵞卵大の腫瘤が触知され,MRIでは右卵管が約7 cmに腫大し,被膜の肥厚があり,右卵管膿瘍と診断された.10年以上前にIUDの挿入歴があるためIUDが原因と考えられ,IUD除去後に抗生剤による保存療法が開始された.2日間の抗生剤の静脈注射でも症状や血液所見ともに改善傾向がなかったため手術療法に切り替え,腫大した右卵管を切除し,ダグラス窩にドレーンを留置した.術後5日目にドレーンを抜去したが,術後7日目より再度発熱し,術後10日目の超音波断層法でダグラス窩に膿瘍が確認されたため,CTガイド下にドレーンを留置し,造影精査を行ったところ直腸穿孔と診断された.手術療法を選択したが,開腹所見では骨盤内臓器は一塊であり,回腸末端より下部の消化管の同定が不可能であったため,回腸末端で人工肛門を造設した.その後は感染徴候が徐々に改善し,5か月後には人工肛門を閉鎖することができた.
 IUDの長期留置による消化管穿孔は診断が困難で,また治療に難渋する.したがって,IUDは定期的な交換や不要時の抜去を行い,PIDを回避することが望ましい.

Key words:Intrauterine device, Pelvic inflammatory disease, Rectal perforation
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