梅毒感染症は2010年以降増加傾向であり，特に20～30代の発生率が高い．妊娠初期における梅毒血清反応検査が推奨されているが，妊婦健診を受診せず梅毒に対し未治療のまま分娩に至る例もある．
　今回，梅毒未治療のまま分娩に至り，児が先天梅毒を発症した2症例を経験したので報告する．
　【症例1】21歳．腹痛のため前医受診し，妊娠反応陽性であり当院へ搬送された．到着時子宮口全開大であり，経腟分娩となった．分娩後の採血で梅毒感染が判明した．児はDubowitz新生児神経学的評価により36週相当．表皮剥離，骨軟骨炎を認め，RPR　64倍，TPHA陽性のため先天梅毒と診断した．
　【症例2】21歳．妊娠初期に近医受診したが，その後妊婦健診は受診せず．妊娠33週4日前医受診しRPR陽性であるも，梅毒精査結果未着であった．妊娠34週5日腹痛を主訴に前医再診し，胎児機能不全のため当院搬送となり，採血で梅毒感染と診断された．緊急帝王切開術を施行し，児は表皮剥離，肝脾腫，骨軟骨炎を認め，RPR　128倍，TPHA　5,120倍のため先天梅毒と診断した．
　【考察】先天梅毒は，妊娠初期の梅毒治療により多くが予防可能である．早期診断，治療が重要であり，妊婦健診受診の徹底を図ることが必要である．