臍帯卵膜付着における臍帯血管の断裂は，頻度は少ないが胎児側からの出血であり児の予後は非常に不良である．今回，切迫早産で管理入院中の双胎で，性器出血後に急激にI児がNon-reassuring fetal status（NRFS）となり緊急帝王切開術を施行したところ，出血性ショックとなっていた1症例を経験したので報告する．症例は36歳，3経妊2経産，二絨毛膜二羊膜性双胎で切迫早産の診断で妊娠30週から入院となり点滴加療を行っていた．妊娠34週5日，着衣に付くほどの性器出血を認め，腹部超音波検査を施行したところII児の心拍は正常であったがI児の心拍が40 bpm台まで低下していた．体位変換や酸素投与を行ってもI児の心拍が改善しなかったため，NRFSの診断にて全身麻酔下で緊急帝王切開とした．I児は1,889 g，Apgar Score 1/1，臍帯血pH 7.296，臍帯血Hb 5.9 g/dl，II児は2,288 g，Apgar Score 4/9，臍帯血pH 7.347，臍帯血Hb 17.7 g/dlであった．血性羊水や胎盤早期剥離の所見は認めなかった．I児の臍帯が卵膜付着で臍帯血管の一部が断裂していたため，そこからの出血が原因で出血性ショックとなりNRFSを引き起こしたと考えられた．臍帯卵膜付着の症例で，胎児心拍異常を伴う性器出血を認めた場合，常位胎盤早期剥離以外にも臍帯血管の断裂を疑う必要がある．また臍帯血管断裂の可能性を疑うためには，日常診療の中で臍帯付着部位の同定が重要である．