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第53巻 第1号

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症例報告
第一子妊娠中に腹部症状が出現した小児神経芽腫陽子線治療による慢性腸間膜動脈虚血合併妊娠の症例
新 夏樹, 安部 加奈子, 小宮 春奈, 玉井 はるな, 人見 義郎, 大原 玲奈, 八木 洋也, 永井 優子, 小畠 真奈, 濱田 洋実, 佐藤 豊実
筑波大学医学医療系産科婦人科学
関東連合産科婦人科学会誌, 53(1):77-81, 2016

 小児期の神経芽腫は集学的治療の進歩によって予後が改善されてきており,近年,その晩期障害が少しずつ問題視されるようになってきた.特に陽子線治療は歴史が浅く,小児期の陽子線治療による長期的影響の報告は少ない.今回我々は,神経芽腫に対して0~1歳時に陽子線治療が行われた症例の2妊娠を経験したので報告する.
 症例は29歳の初産婦.初回妊娠では,妊娠11週から食後の上腹部痛と急激な体重減少が出現したため精査を行うも,妊娠中に腹痛と体重減少の原因疾患の診断には至らなかった.また,胎児発育不全が認められた.前期破水から早産となった.産褥期の造影CTで慢性の腸間膜動脈虚血の診断に至り,シロスタゾール内服治療を開始し,症状の改善をみた.3年後,シロスタゾール治療継続中の2回目妊娠では,妊娠中に腹痛や体重減少といった症状の出現はなかった.ただし,初回妊娠と同様に胎児発育不全を発症し,また早産となった.
 本症例における慢性腸間膜動脈虚血は,小児期の陽子線治療による広範囲の動脈発育不全が原因と考えられる.こうした動脈狭窄による消化管の虚血は特異的症状が無く,診断が難しい疾患であり,妊娠中であったこともあり診断に非常に苦慮した.本症例では2妊娠でともに胎児発育不全と早産を認めており,陽子線治療の晩期障害としての動脈発育不全に起因する子宮動脈の狭小化が関係していると推測された.

Key words:chronic mesenteric ischemia, neuroblastoma, proton therapy, pregnancy, abdominal pain
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