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第53巻 第4号

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症例報告
尿路感染症から妊娠中の貧血を来した水腎症の一例
徐 恒杰, 太田 孝志, 今村 正敏
榛原総合病院産婦人科
関東連合産科婦人科学会誌, 53(4):449-453, 2016

 我々は水腎症を伴った尿路感染症が原因で妊娠中の貧血を来したと思われる妊婦症例を経験した.症例は35歳,0経妊の妊婦で,妊娠22週2日でヘモグロビン9.5 g/dl,MCV 86 flと軽度の貧血を認めたが,徐々に悪化し,妊娠26週4日にはヘモグロビン8.6 g/dl,MCV 85.5 flになった.近医で鉄剤を投与し,治療されたが,貧血の改善を認めなかった.妊娠28週2日に紹介で当院受診,ヘモグロビン8.4 g/dlの貧血を認めたので,クエン酸第一鉄ナトリウム,葉酸,ベンフォチアミンで治療したが,ヘモグロビン7.8 g/dlに低下した.免疫学的な便潜血検査を3回実施したところ,1回陽性であったが,上部消化管内視鏡検査では異常を認めなかった.下痢症状が続くので,検査した結果ノロウィルス陽性であったが,その後下痢症状は消失した.また,入院中に39.2度の発熱があり,CRP及びWBCが上昇したので,原因を検索したところ,尿検査にてWBC(3+),細菌(3+)と異常を認め,エコー検査では水腎症と指摘され,複雑性尿路感染症と診断した.セファゾリン(CEZ)1 g/日,2日間投与,その後尿培養でPseudomonas aeruginosaを認めたため,ピペラシリン(PIPC)1 g/回,3回/日,10日間投与したところ解熱し,ヘモグロビンも8.7 g/dlに上昇し,分娩直前にはヘモグロビンは10.5 g/dlに上昇した.本例では,水腎症に伴った慢性複雑性尿路感染症が治療抵抗性の妊婦貧血の原因になったと推定される.

Key words:pregnancy, anemia, hydronephrosis, urinary tract infection
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