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第53巻 第4号

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症例報告
播種性血管内凝固症候群を併発した子宮腺筋症の1例
斉藤 慶弘, 塩野入 規, 横井 由里子, 小原 美幸, 塩沢 功
松本市立病院産婦人科
関東連合産科婦人科学会誌, 53(4):505-511, 2016

 子宮腺筋症がDIC発症の要因となることは稀である.今回我々は女性ホルモン剤内服後に子宮の局所炎症を契機にDICを併発したと考えられる症例において,早期診断することによりDICの重症化を回避出来た子宮腺筋症の1例を報告する.症例は33歳.以前より子宮腺筋症の診断にて外来で経過観察した.2013年9月中旬に過長月経を認めた為,同年10月初旬よりノルゲストレル・エチニルエストラジオール錠を処方した.同年10月下旬に多量の性器出血と腹痛の為当院受診した.子宮腺筋症による過多月経と貧血の診断にて同日入院し血液検査を施行した.検査値にてWBC 14,500/μl,CRP 8.12 mg/dl,PT 16.2秒,APTT 42.5秒と,強い炎症所見と軽度のPT及びAPTTの延長を認めた.FDP,Dダイマーの検査を追加したところ,FDP 469.2 μg/ml,Dダイマー137.0 μg/ml,と著明な上昇を示し,フィブリノゲンも61.8 mg/dlと著明な減少を認めた.DICと診断し,メシル酸ガベキサートの持続点滴静注を入院同日より開始した.入院翌日にはFDP 189.0 μg/mlに低下した.その後も徐々に炎症所見とFDP値は改善し,入院15日目に退院した.2014年3月初旬に子宮全摘術を施行した.摘出子宮は新生児頭大に腫大し,筋層の肥厚を認めた.病理組織検査も子宮腺筋症の診断であった.異常な性器出血を主訴に受診する患者に対しては,凝固系の精査が必要である.本症例のように凝固系に軽度でも異常所見を認めた場合は,DICの早期診断のためにもFDP,Dダイマー等を追加検査することが非常に重要である.

Key words:Disseminated Intravascular Coagulation, Estrogen-Progestin formulations, Fibrin Degradation Products(FDP), adenomyosis
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