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第53巻 第4号

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症例報告
小腸コレステロールトランスポーター阻害薬を導入し治癒した難治性乳糜腹水の一例
尾臺 珠美1), 栗田 郁1), 沖倉 詩織1), 萬年山 悠1), 高木 香織1), 西田 慈子1), 塗師 由紀子1), 中村 玲子1), 市川 麻以子1), 遠藤 誠一1), 坂本 雅恵1), 宮坂 尚幸2), 島袋 剛二1)
1)総合病院土浦協同病院産婦人科
2)東京医科歯科大学小児・周産期地域医療学
関東連合産科婦人科学会誌, 53(4):539-545, 2016

 症例は72歳,2経妊2経産.腹部膨満感を主訴に近医内科を受診し,下腹部の巨大腫瘤を指摘され当科紹介受診となった.220×100 mm大の多房性囊胞性腫瘍を認め,卵巣癌の疑いにて開腹術を施行した.左卵巣の術中迅速組織診で腺癌と診断され,卵巣癌根治術を施行した.術後3日目から食事を開始したところドレーンから多量の乳白色の排液を認め,乳糜漏と診断した.食事療法を行い,術後42日目に退院となった.明細胞腺癌stage I C3の診断でdose dense TC療法を3クール施行したが,腹水貯留は持続しており,乳糜腹水の治療目的に術後5か月目に入院となった.リンパ管シンチでの漏出部位同定は困難であり,酢酸オクトレオチド皮下投与と経腸栄養剤(エレンタール)による食事療法を行った.徐々に腹水は軽減し,エゼチミブ内服に変更し52日目に退院となり,以後腹水は消失し再貯留を認めることなく経過している.
 乳糜腹水は比較的稀な術後合併症ではあるが,低栄養や免疫低下を招き,治療は長期化する可能性があるため,早期の適切な治療が望ましい.本症例では長期の治療期間を要したが,食事療法と酢酸オクトレオチド・エゼチミブの併用で乳糜腹水の改善を認めた.エゼチミブを導入し退院後に治癒した難治性乳糜腹水の1例を経験したので,文献的考察を加え報告する.

Key words:chylous ascites, somatostatin, oral fat-free elemental diet, ezetimibe
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