妊娠性肝内胆汁うっ滞症は早産や子宮内胎児死亡などの児の合併症を惹起する重篤な妊娠合併症であるが,本邦では稀であるため疾患として認識されない場合も多いようである.今回われわれは,妊娠性肝内胆汁うっ滞症に重症妊娠高血圧症候群を合併した症例で,最終的に早産に至った1例を経験したので報告する.
症例は45歳4経妊2経産婦.妊娠20週から全身瘙痒感を自覚していた.妊娠32週に血圧上昇を指摘され,妊娠高血圧症候群の診断で入院した.入院後は安静および降圧剤内服治療により血圧は安定した.なお,血液検査でAST:70 U/L,ALT:91 U/Lと肝逸脱酵素の上昇を認めた.
妊娠35週2日から全身瘙痒感が急速に悪化し睡眠障害を伴うようになった.抗ヒスタミン薬,ステロイド外用薬では無効であり,血液検査にて胆汁酸:69.6 μmol/Lと上昇が確認できたため,臨床経過と併せて妊娠性肝内胆汁うっ滞症と診断した.治療方法を検討していたところ,妊娠35週4日に自然陣痛が発来し経腟分娩となった.分娩時異常としては羊水混濁を認めた.児は女児で,1,870 g,アプガースコア8/9点,UApH7.351だった.問題の全身瘙痒感は分娩後に経過観察のみで急速に改善した.
全身瘙痒感を訴える妊婦には常に本疾患を念頭に置いて原因検索を行うことが重要で,総胆汁酸測定などによる早期の診断が妊娠性肝内胆汁うっ滞症による児の合併症予防に寄与すると考える.
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