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第53巻 第4号

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症例報告
開脚位での卵巣癌術後に発症した総腓骨神経麻痺の1例
小林 梓, 木暮 圭子, 多胡 佳織, 平川 隆史, 山下 宗一, 池田 禎智, 中尾 光資郎, 田口 亜由子, 峯岸 敬
群馬大学医学部附属病院産科婦人科
関東連合産科婦人科学会誌, 53(4):589-592, 2016

 骨盤内手術後の神経障害には様々あるが,総腓骨神経麻痺は比較的稀な合併症である.報告例では,長時間手術,体型,術中体位による膝関節の過度の伸展や腓骨頭の圧迫が共通している.今回,開脚位での卵巣癌術後に総腓骨神経麻痺を発症した1例を経験した.症例は60歳,身長144 cm,体重33 kg,BMI 16,両側の悪性卵巣腫瘍の疑いで当院に手術目的に入院した.術中の迅速病理診断で漿液性腺癌の結果であったため,術式は両側付属器摘出,単純子宮全摘,大網切除,骨盤部及び傍大動脈リンパ節郭清とした.手術時間は8時間51分,全身麻酔で管理した.術中体位は開脚位で両側膝部直下の下腿を抑制帯で手術台に固定した.術後1日目の離床開始時に右下垂足を認め,精査の結果,右末梢性総腓骨神経麻痺と診断した.その後,保存的加療で症状は軽快し,術後1か月で運動障害は完治した.総腓骨神経麻痺の症状は一過性であり,保存的治療により改善することが多いが,術後の離床の遅延や患者のQOLの低下を来す.本症例の様にリスクの高い症例では術中から発症予防に努めるべきである.

Key words:Postoperative Complications, Peroneal Neuropathy, Ovarian Cancer
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