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第53巻 第4号

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症例報告
妊娠中にurinomaを発症した一例
春名 佑美, 田中 啓, 松島 美穂, 松澤 由記子, 井澤 朋子, 古川 誠志, 小林 陽一, 岩下 光利
杏林大学産科婦人科学教室
関東連合産科婦人科学会誌, 53(4):605-608, 2016

 妊娠中の水腎症は,プロゲステロンの影響や妊娠子宮の機械的圧迫から比較的高頻度にみられる.解剖学的理由から右側腎に多く起こり,大部分は自然軽快する.腎周囲腔への尿の溢流を伴う重症水腎症をurinoma(尿囊腫)というが,妊娠中におこることはきわめて稀である.我々は,妊娠後期に左腎にurinomaを発症した症例を経験したので報告する.症例は36歳の初産婦.妊娠27週に左腎盂腎炎を発症し,抗生剤治療で一時軽快したが,退院4日後に左腰背部痛が再燃し来院した.再来院時の経腹超音波断層法検査にて左腎盂の著明な拡張と腎周囲腔の液体貯留を認め,腎機能も軽度低下していた.左腎臓のurinomaと診断し,尿管ステントを留置した.ステント留置後,症状はすみやかに改善し,その後分娩まで再発はなかった.妊娠高血圧症の合併のため妊娠37週に帝王切開で分娩となり,分娩1か月後に尿管ステント抜去した.ステント抜去1か月後,フォローアップのCT検査で左水腎症の残存および腎盂尿管移行部の尿管狭窄が確認された.先天的に尿管に狭窄部位があり,妊娠子宮の圧迫の影響で水腎症が重症化し妊娠性水腎症(urinoma)に至ったと推測された.分娩より1年後でも腎機能は妊娠前までの回復はなく,今後は手術も検討されている.

Key words:urinoma, pregnancy, pyelonephritis
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