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第53巻 第4号

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症例報告
腹腔鏡下手術で傍卵巣囊腫による卵管捻転を診断,治療した一例
上田 麗子, 佐治 晴哉, 伊集院 昌郁, 峰 優子, 和泉 春奈, 荒田 与志子, 持丸 綾
藤沢市民病院産婦人科
関東連合産科婦人科学会誌, 53(4):621-625, 2016

 傍卵巣囊腫は比較的若年に発症し,時に卵管捻転を来すことが知られている.今回我々は術前に卵巣囊腫茎捻転を疑い腹腔鏡下手術を施行し,傍卵巣囊腫による卵管捻転を診断,治療した症例を経験したので報告する.
 症例は18歳,0回経妊0回経産,性交歴なし,既往歴なし.左下腹部から背部の鈍痛を主訴に近医を受診したところ,経腹エコー上左付属器領域に径6 cm大の単房性腫瘤を認め,精査治療目的に当院紹介となった.初診時急性腹症は呈しておらずNSAIDs内服で症状軽快したため経過観察とした.1か月後の再診時にも症状はないが,エコー上で腫瘤は径8.6 cm大に増大した.その後に初診時同様の左下腹部痛が出現し緊急受診となった.経直腸エコーで径9 cm大の二房性腫瘤を認めたが,卵巣囊腫茎捻転を疑うような急性腹症所見に乏しく,骨盤MRIでは,左卵巣囊腫茎捻転の鑑別を要するもののダグラス窩左右に位置する両側卵巣囊腫と診断した.症状の増悪寛解を繰り返すため,診断と治療を兼ねた腹腔鏡下手術を施行したところ,両側卵巣は正常大でありダグラス窩に径6 cm大の傍卵巣囊腫を認め,左卵管が反時計回りに1,080度捻転していた.壊死や鬱血所見なく,卵管捻転を解除した上で左傍卵巣囊腫摘出術を施行した.
 傍卵巣囊腫による卵管捻転は卵巣囊腫茎捻転と比較し,急性腹症としての症状が軽度にとどまり易い.若年の限局する軽度の下腹部痛を繰り返す患者においては,傍卵巣囊腫の卵管捻転も鑑別に挙げ,時期を逸さず手術に踏み切ることが肝要である.

Key words:Paraovarian cyst, Tubal torsion, Laparoscopic surgery
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