精索静脈瘤は男性不妊症の原因の30%を占め外科的治療が可能であるが,手術により妊孕性が改善するかどうかについては未だ一定の見解は得られていない.今回我々は手術群と待機群の妊娠転帰と術後精液所見の改善率について後方視的に検討した.不妊を主訴に当院を受診され,男性因子を有し(精子運動率40%以下もしくは精子濃度1,500万/ml以下),診察時に精索静脈瘤を有する全56例を対象とした.初診時の精液所見,静脈瘤のgrade,夫婦の年齢,夫のFSH値,テストステロン値,術後3か月後,6か月後の精液所見,妻の治療内容,妊娠の有無について検討した.全56例中,待機群は33例,手術群は23例だった.総運動精子数は,待機群5.02×106に対して手術群1.85×106と手術群で有意に低く(P<0.05),より精液所見が不良の症例に手術を施行していた.手術群における総運動精子数は,術後3か月,術後6か月共に術前に比して有意に改善していた(それぞれp=0.033,p=0.023).妊娠率は待機群で36.4%(12/33例),手術群で65.2%(15/23例)であり手術群で高い傾向だった(P=0.056).さらに手術群の妊娠症例15例のうち3例は,術後に治療法のstep-downが可能となっていた.精索静脈瘤手術により精液所見の改善を期待でき,妊娠率の改善に寄与する可能性があることがわかった.
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