卵巣の子宮内膜症性囊胞からの悪性腫瘍の発生はよく知られているが子宮腺筋症の悪性化の報告は稀である．今回，MRI検査での術前診断が困難であった腺筋症から発生したと考えられる内膜癌の一例を経験したので報告する．症例は60歳の1回経産の女性で子宮腺筋症と子宮筋腫，両側卵巣子宮内膜症性囊胞にて18年前から当院外来を受診していた．CA19-9とCA125の上昇が認められたが，MRI及びCT検査で子宮と卵巣に明らかな悪性腫瘍を示唆する所見はみられなかった．その後も腫瘍マーカーが上昇したため¹⁸F-FDG -PET/CT検査を施行したところ，子宮体部後壁にSUV値16.7の集積がみられた．MRI検査上子宮筋層内に明らかな腫瘤は同定できなかったが，子宮腺筋症から発生した子宮体癌を疑い手術療法を施行した．摘出した子宮の後壁に約3 cmの腫瘤が存在し同部位の迅速組織診は類内膜腺癌であった．また閉鎖リンパ節に腺癌の転移を認め単純子宮全摘術，両側付属器摘出術，骨盤及び傍大動脈リンパ節郭清術，大網切除術を施行した．摘出子宮の病理検査で壁内腫瘍は類内膜腺癌grade 2であったが子宮内腔との連続性はなかった．子宮腺筋症は認めたが内膜には病変がみられず，また他臓器からの浸潤や転移は否定的であったため子宮腺筋症から発生した子宮体癌IIIC2期と診断した．現在はパクリタキセル，カルボプラチンによる術後補助化学療法を施行中である．