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第54巻 第4号

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症例報告
子宮体下部に巨大腫瘤を呈した帝王切開創部子宮内膜症
岡崎 有香1), 青木 千津1), 井上 久美子1), 渡邊 之夫1), 小池 数与2), 沖 明典3)
1)県北医療センター高萩協同病院産婦人科
2)北茨城市民病院産婦人科
3)茨城県立中央病院産婦人科
関東連合産科婦人科学会誌, 54(4):477-482, 2017

 術後創部に異所性子宮内膜症を生じる創部子宮内膜症は,創部腹壁に生じるものがほとんどである.この場合,一般的に症状として月経に伴う周期的な疼痛があり,発見および診断の一助になる.今回我々は,子宮筋層内に生じ,また16年もの間,無症状で経過した創部子宮内膜症の1例を経験した.患者は2回の帝王切開既往のある45歳で,それまで無症状であったが,術後16年経過して腰痛を契機に受診したところ,子宮体下部に10 cmの腫瘤が認められた.変性筋腫や肉腫,内膜症性囊胞が考えられたが明細胞癌など悪性腫瘍合併の可能性も否定はできず,informed consentを得て子宮全摘術を行ったところ,帝王切開創部から生じた子宮筋層内の創部子宮内膜症であった.帝王切開後の創部子宮内膜症は,子宮筋層にも生じ得ることが示され,疼痛を伴わず無症状で経過することもありうる.腹壁に限らず,術後創部に囊胞性腫瘤を認めた場合は本疾患も考慮すべきである.

Key words:endometriosis, scar, caesarean section
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