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第54巻 第4号

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症例報告
原発巣の診断に苦慮した転移性卵巣腫瘍の1例
遅野井 彩, 梅木 英紀, 郡 悠介, 嶋田 未知, 櫻井 香織, 尾臺 珠美, 染川 可明
JAとりで総合医療センター産婦人科
関東連合産科婦人科学会誌, 54(4):525-530, 2017

 転移性卵巣腫瘍の原発巣として大腸癌の占める割合は1.6%から6.4%と報告されている.虫垂癌は大腸癌全体の1%を占める程度の稀な疾患である.今回,術前に原発巣の診断に苦慮し,腹腔鏡による術中所見と術中迅速病理診断より原発巣を虫垂と診断した転移性卵巣腫瘍の症例を経験したため報告する.症例は78歳,5回経妊2回経産.不正出血と下腹部膨満感を主訴として当科初診となった.CT,MRIから両側充実性卵巣腫瘤,腹膜播種,虫垂壁肥厚を認めたため消化管原発の転移性卵巣腫瘍を疑った.原発巣の検索目的に施行した下部消化管内視鏡では壁外浸潤が疑われ,生検を施行したところadenocarcinomaであった.腫瘍マーカーはCA125 198.3 U/mlと高値であったが,CEA 1.6 ng/ml,CA19-9 6.9 U/mlと正常値であった.これらの結果から卵巣癌の腹腔内および虫垂,S状結腸への播種・転移が最も疑われたため,術中迅速病理診断による組織診断を目的とした腹腔鏡下右付属器摘出術を施行した.術中の腹腔内所見は多量の腹水と腹壁の播種巣,虫垂周辺の硬化と周辺腸管の巻き込み像を認めた.組織診断の結果は消化管由来の印環細胞癌の所見であり,手術所見と併せて虫垂原発の転移性卵巣腫瘍の診断が最も妥当であると考えられた.
 腹腔鏡による組織診断で,術前検査では診断が困難であった症例に対し,より低侵襲に診断することが可能であった.

Key words:Metastatic ovarian tumor, Appendix cancer, Laparoscopic salpingo-oophorectomy
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