卵巣腫瘍と鑑別を要した骨盤内脂肪肉腫を1例経験したので報告する．症例は26歳，女性．1妊1産．1か月前からの腹部膨満感を主訴に近医内科を受診し，精査目的のため当院内科へ紹介された．CTにて骨盤内に12 cm大の腫瘤像を認め，卵巣腫瘍を疑われ当科依頼となった．また，心房中隔にも腫瘤像を認め転移性腫瘍の可能性があり，精査のため入院となった．骨盤内腫瘤に対し，開腹手術を施行した．術中所見では大量の血性腹水を認め，子宮，付属器，腸管含め虫垂には明らかな腫瘍の発生を認めず，大網と一塊となった後腹膜発生の腫瘍が考えられた．内性器全摘術，大網部分切除術，虫垂切除術および腫瘍摘出術を施行した．術後病理組織学的診断は後腹膜発生の脱分化型脂肪肉腫であった．心房中隔腫瘤については積極的な検査および治療は行わない方針となり，術後化学療法としてドキソルビシン，イホスファミド療法を施行した．1コース施行後病状増悪し，在宅緩和ケアを希望され退院となった．退院1週間後に在宅医により死亡が確認された．脂肪肉腫は四肢の軟部組織や後腹膜にしばしば発生する軟部腫瘍で，好発年齢は50～60歳代，性差はないとされる．本症例は20歳代と若年発症し，急速に病状が進行し予後不良であった．以上文献的考察を加えて報告する．