褐色細胞腫合併妊娠は極めてまれとされており,特に分娩前に診断されなかった場合に母児とも高い死亡率が報告されている.今回我々は,帝王切開術後の多量出血で子宮全摘を要し,術後に褐色細胞腫と診断された1例を経験したので報告する.
症例は33歳,3妊1産.前回妊娠時は妊娠34週で重症妊娠高血圧症候群の診断のため緊急帝王切開術を施行している.今回の妊娠中,妊娠32週0日で収縮期血圧180 mmHg台までの血圧上昇を認め,以降入院にて降圧薬内服としていた.血圧上昇が頻回となったため,妊娠36週0日で緊急帝王切開術を施行,2,906 g女児を娩出した.術後2時間程度で多量出血によるショックが出現し,コントロール不良となったため,緊急再開腹にて単純子宮全摘術を施行した.その際施行した躯幹部CT検査で右副腎の腫大を認め,その後の精査にて右副腎褐色細胞腫が強く疑われ,3か月後に腹腔鏡下右副腎摘出術を施行され確定診断となった.なお後の問診にて家系に褐色細胞腫と甲状腺髄様癌が複数見られることが判明し,多発性内分泌腫瘍症2A型(MEN2A)と考えられた.
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