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第56巻 第1号

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症例報告
帝王切開瘢痕部妊娠に対して,腹腔鏡下腟式子宮全摘術を施行した高度肥満患者の1例
塙 真輔, 三橋 暁, 石川 博士, 碓井 宏和, 佐藤 明日香, 高木 亜由美, 鈴木 義也, 羽生 裕二, 松岡 歩, 生水 真紀夫
千葉大学医学部附属病院婦人科
関東連合産科婦人科学会誌, 56(1):105-109, 2019

 帝王切開瘢痕部妊娠(Cesarean scar pregnancy以降CSP)は帝王切開創部の妊娠で,異所性妊娠の一つである.今回3回の帝王切開既往のある高度肥満患者のCSPに対し腹腔鏡下子宮全摘術(TLH)を施行した症例を経験したので報告する.患者は34歳,5妊3産BMIは41 kg/m2.超音波検査およびMRIで既往帝王切開創部に一致し胎囊を認めたため,妊娠10週で帝王切開瘢痕部妊娠と診断した.患者は妊孕性温存の希望がなく,子宮摘出を希望したため,TLH,両側卵管切除を施行した.両側子宮動脈を結紮し,卵巣固有索の切離を行ってから,膀胱子宮窩腹膜を切開し,CSP周囲筋層に希釈バゾプレッシンを局注した.腹腔鏡の拡大視で剝離面を視認しつつCSP部と膀胱の剝離を行うことで,剝離面からの出血は最小限に抑えることができた.一方,腟からCSP部に流入する血流は豊富で腟管切開時に腟動脈からの強出血を認め,止血に難渋した.手術時間は3時間59分,出血量は440 gで輸血は行わなかった.3回帝切既往のある高度肥満患者のCSPに対してTLHを施行した1例を経験した.CSPは帝王切開の既往を持つため,腹壁と大網の癒着や膀胱子宮窩腹膜の挙上,膀胱と子宮前壁の癒着が予想される.腹腔鏡の拡大視野と深部到達能,希釈バゾプレッシンの局注などを併用することによりCSPに対するTLHを安全に行うことが可能である.

Key words:cesarean scar pregnancy, total laparoscopic hysterectomy, obesity
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