書誌情報

第56巻 第4号

  • 書誌情報
  • 全文PDF

症例報告
分娩直後の子癇発作により発症したPosterior Reversible Encephalopathy Syndromeの1例
鈴木 悠1), 伊藤 歩2)3), 古川 隆正2), 波平 制士2)3), 河西 貞智2)3), 中岡 賢太郎2)3), 林 理雅2)3), 島井 和子2), 高橋 賢司2)3), 中熊 正仁2)
1)上尾中央総合病院臨床研修センター
2)上尾中央総合病院産婦人科
3)東邦大学医学部産科婦人科学講座
関東連合産科婦人科学会誌, 56(4):501-506, 2019

 Posterior Reversible Encephalopathy Syndrome(PRES:可逆性白質脳症)は,頭痛,視野異常,痙攣等を呈し,後頭葉や頭頂葉を中心とした脳浮腫を認める一過性の症候群であり,妊娠中や産褥期での発症が報告されている.29歳.1妊0産.当院で妊娠管理を行い特記すべき既往歴は認めなかった.妊娠39週1日に前期破水のため入院し,入院6時間後に陣痛開始となった.陣痛開始6時間後に頭痛と軽度の血圧上昇を認めたが,鎮痛薬の内服で症状は消失し血圧も改善した.その後の血圧は正常域で推移し,妊娠39週2日で経腟分娩に至った.
 分娩1時間後に突然の意識消失と全身性強直性痙攣が出現し,急激な血圧上昇を認めた.痙攣発作消失後は意識清明で,神経学的所見や血液検査所見に異常を認めず,痙攣発作9時間後に頭部MRI検査を行いPRESと診断した.産褥16日目に頭部MRI検査を再検したところPRESの改善を認め,その後の血圧経過,産褥経過共に良好であったため1か月健診で終診となった.
 本症例は妊娠経過中に妊娠高血圧症候群の発症もなく,初産婦であること以外に子癇発作のリスク因子を認めず,子癇発作やPRESの発症を予め予測することは困難であった.分娩前に認めた頭痛や急激な血圧上昇の様な子癇発作の前駆症状を認めた場合,子癇発作やPRESの発症に備えた薬剤準備や管理を考慮することが重要である.

Key words:PRES, RCVS, eclampsia, HDP, vasogenic edema
他地区の会員で全文PDFをご覧になりたい方は、学会事務局へお問合せください。

一般社団法人
関東連合産科婦人科学会

〒102-0083
東京都千代田区麹町4-7
麹町パークサイドビル402
(株)MAコンベンションコンサルティング内
E-mail:kantorengo@jsog-k.jp

一般社団法人関東連合産科婦人科学会

ページの先頭へ

Copyright © 一般社団法人関東連合産科婦人科学会