腹膜インプラントは浸潤性と非浸潤性に分類され，重要な予後因子である．今回我々は非浸潤性の腹膜インプラントを伴う卵巣漿液性境界悪性腫瘍（Serous borderline tumor；SBT）を3例経験したので報告する．
　症例1，41歳，右卵巣癌疑いで開腹手術を行い，迅速病理診断では境界悪性腫瘍であった．単純子宮摘出術，左付属器摘出術，大網部分切除術，腹膜腫瘍摘出術を行った．術後病理診断は両側卵巣SBT，非浸潤性腹膜インプラント，手術進行期分類IIB期であった．症例2，31歳，左卵巣癌疑いで開腹手術を行い，迅速病理診断では境界悪性腫瘍以上が疑われ，浸潤性腹膜インプラントの可能性が指摘されたため，単純子宮摘出術，右付属器摘出術，大網部分切除術，後腹膜リンパ節郭清を追加した．術後病理診断は左卵巣SBT，非浸潤性腹膜インプラント，手術進行期分類IIB期であった．症例3，43歳，右卵巣癌疑いで開腹手術を行い，迅速病理診断では境界悪性腫瘍であったため，単純子宮摘出術，左付属器摘出術，大網部分切除術，ダグラス窩腹膜腫瘍摘出術，虫垂切除術を行った．術後病理診断では，両側卵巣SBT，大網に非浸潤性腹膜インプラントを認め，手術進行期分類IIIA2期であった．卵巣SBTでは腹膜インプラントは稀ではないため，原発病変に加え，腹腔内の播種病変を入念に検索し，完全摘出することが重要であり，その結果として予後改善に寄与すると考える．