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第57巻 第4号

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症例報告
老年期に生じた帝王切開創を介したS状結腸子宮瘻の一例
石井 賢治, 吉野 明博, 斉藤 恵子, 片岡 良孝
国立病院機構西埼玉中央病院産婦人科
関東連合産科婦人科学会誌, 57(4):451-456, 2020

 子宮筋層は厚いため,憩室炎等の炎症に起因した腸管子宮瘻は非常に稀である.今回我々は,強い炎症所見を呈することなく帝王切開創を介して短期間のうちにS状結腸子宮瘻を形成した症例を経験したので報告する.
 症例は67歳,2妊2産(第1子帝王切開,第2子経腟分娩).2日間の全身倦怠感,腹部膨満感があった後,少量の性器出血と帯下を認めたものの,発熱や疼痛はなかった.初診時に腹部は平坦で圧痛も認めず.腟鏡診では子宮頸部,腟壁に異常なかったが,黄色泥状帯下を認めた.明らかな腫瘤性病変は認めなかった.経腟超音波検査にて子宮頸部前壁に帝王切開創が確認でき,隣接して腸管内容と思われる微細点状の高輝度エコー像が認められたため,帝王切開創を介した腸管子宮瘻を疑った.注腸検査でS状結腸憩室から続く不正な瘻孔が確認できたため,憩室炎に起因したS状結腸子宮瘻と診断した.初診から約7週間後に左尿管ステントを留置の上,腹式単純子宮全摘,両側付属器切除,S状結腸高位前方切除,一期的端側吻合術を実施した.術後経過は良好で,術後19日目で退院となった.
 食生活の欧米化に伴いS状結腸憩室症は増加傾向にある.帝王切開率の上昇と人口の高齢化に伴い,帝王切開手術の既往と憩室症を有する女性は今後増加するものと思われる.本症例のように炎症症状をほとんど伴わないうちにS状結腸子宮瘻を形成することもあり,診断には注意を要する.

Key words:sigmoid-uterine fistula, colo-uterine fistula, diverticulitis, cesarean section scar
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