産科危機的出血(postpartum hemorrhage:PPH)は最多の母体死亡の要因である.しかしPPHは術後24時間以内に多く発生し以降の発症は稀である.今回は術後24時間以上経過して卵巣静脈破綻により致死的な後腹膜出血きたしたSecondary PPHの一例について報告する.
症例は41歳,4妊3産.帝王切開時出血は400 g程度で産褥1日目はHb10 g/dL台にて推移した.産褥2日目授乳直後より急激な下腹部痛があり血圧は50/30 mmHg,Hb 4.2 g/dLまで低下ありRBC 8 U,FFP 6 U輸血し昇圧剤も使用したところHb 9.5 g/dL,血圧110/70 mmHgまで回復したがその後状態安定せず当施設に搬送された.緊急開腹術施行したところ左卵巣静脈の損傷あり左腎静脈周辺部に及んでいた.損傷起始部を結紮・血腫除去後閉腹し,挿管のままICUに入室した.総出血量7,766 ml,総輸血・輸液は赤血球液28単位,新鮮凍結血漿 30単位,血小板40単位,フィブリノゲン7バイアル,アンチトロンビンIII 3,000単位,アルブミン製剤500 mlに及んだ.術後たこつぼ型心筋症,腹腔内感染を発症したが内服加療,腹腔ドレナージを行い術後33日に退院した.
Secondary PPHの発症は稀ではあるが産褥期に急激な経過をたどる症例もあり厳重な術後管理を行うことが重要である.
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