子宮肉腫は子宮体部悪性腫瘍の4~9%を占め1),予後不良の腫瘍である.今回,子宮肉腫を契機とし動脈内血栓による多臓器梗塞を発症した症例を経験したため報告する.症例は49歳,2妊2産.腹痛,背部痛を主訴に近医を受診した.造影CTで下行大動脈内に多発する血栓と脾梗塞,子宮体部に腫瘍性病変を認めた.前医に転院搬送となり,ヘパリン投与を開始した.MRIで子宮体部にT2WIで高信号を呈する最大87 mm大の腫瘍性病変を認めた.抗凝固療法をエドキサバンに変更後,精査加療目的で当院転院となった.転院後の造影CTで新規の腎梗塞を認めた.PET-CTで子宮体部に異常集積を認め,子宮以外に原発巣となりうる病変は指摘されなかった.血栓性素因のない多発梗塞であり,悪性腫瘍由来の過凝固状態によるものと推定された.悪性腫瘍の積極的治療が必要と考え,子宮肉腫疑いで単純子宮全摘出術+両側付属器摘出術を施行した.病理検査でStage IB期,高異型度子宮内膜間質肉腫と診断され術後化学療法としてDocetaxel+Gemcitabine療法6コース施行.現在,動脈内血栓の増大や腫瘍の再発なく経過している.子宮肉腫を契機とし動脈内血栓による多臓器梗塞を発症した症例を経験した.子宮癌・卵巣癌等によるTrousseau症候群等の血栓,梗塞病変が認められる症例の報告は散見されるが,子宮肉腫における報告は少ない.血栓,梗塞病変の増悪を防ぐためには原発巣に対する治療が有効である.そのために他の因子を否定するための術前検査,周術期のリスクを低下するための適切な抗凝固療法が必須と考えられる.
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