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第57巻 第4号

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症例報告
骨転移による脊髄圧迫症状に対して緊急放射線照射を要した進行卵巣悪性腫瘍の1例
松田 紀代子, 對馬 可菜, 椎名 美季, 飯島 朋子, 仙波 宏史, 中村 加奈子, 片山 素子, 木須 伊織, 三浦 裕美子, 平尾 薫丸
国家公務員共済組合連合会立川病院産婦人科
関東連合産科婦人科学会誌, 57(4):529-535, 2020

 骨転移は疼痛,病的骨折,脊髄圧迫をひき起こし患者のQuality of Life(QOL)を大きく損なう要因となる.今回,進行卵巣悪性腫瘍の精査中に多発骨転移による背部痛が増悪し,脊髄圧迫症状に対する緩和治療として緊急放射線照射を要した症例を経験したので報告する.
 症例は78歳,女性.1妊1産.前医にて骨盤内腫瘍を指摘され当院を紹介受診.骨盤MRIおよびPET-CTでは径10 cm大の充実成分を有する多房性卵巣腫瘍と腹膜播種,肺転移,多発骨転移,膵臓腫瘍を認めた.腹水細胞診ではAdenocarcinomaが推定され,卵巣原発悪性腫瘍IVB期と考えられ,開腹手術が計画された.しかし手術待機中に背部痛が増強したため救急外来を受診.胸椎転移病巣による脊髄圧迫症状と診断し,直ちに緩和的放射線照射が行われた.その後,両下肢麻痺が出現し高用量ステロイド療法を併用した.緊急放射線照射を終了後には麻薬性鎮痛薬も導入され,疼痛は軽減したものの,下肢麻痺は残存した.その後,化学療法を1サイクルおこなうも奏効せず永眠された.
 悪性腫瘍の骨転移による脊髄圧迫は不可逆性の神経障害をひき起こし,患者のQOLを著しく低下させうる.それゆえにOncology emergencyの病態であり,骨転移に関わる各診療科と連携できる診療体制の構築が必要となる.さらに原発病巣の確定よりも,まずは骨転移による危険度の評価と,それに対する適切な治療を可及的速やかに実施することが肝要と言える.

Key words:ovarian malignant tumor, malignant spinal cord compression symptom, bone metastasis, oncology emergency, multidisciplinary team approach
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