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第57巻 第4号

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症例報告
卵円孔開存に伴う奇異性脳梗塞によるADL低下と,多発子宮筋腫による下大静脈圧排が,反復性肺動脈塞栓症の原因と考えられた一例
丸山 康世, 平田 豪, 牧野 睦子, 山本 賢史, 中島 文香, 小澤 雅代, 堀田 裕一朗, 成毛 友希, 平吹 知雄
小田原市立病院産婦人科
関東連合産科婦人科学会誌, 57(4):555-561, 2020

 脳梗塞によるADL低下のため,併存する子宮筋腫により下大静脈圧排が生じ反復性肺動脈塞栓症の起因となり,最終的に卵円孔開存による奇異性脳塞栓症と診断された症例を経験した.
 症例は45歳.子宮筋腫に対し経過観察,偽閉経療法施行後に経過観察していた.第1病日に意識障害のため救急搬送され,右中大脳動脈閉塞脳梗塞の診断となり,脳神経外科入院となった.内科的治療,外減圧術,内減圧術が施行された.第14病日に呼吸苦,酸素飽和度低下,Dダイマー上昇を認め,造影CT検査で両肺動脈塞栓症,左下肢静脈血栓症,子宮筋腫により増大した長径20 cmの子宮を認めた.一時的下大静脈フィルターを留置し,血栓溶解療法,抗凝固療法を開始するも,第21病日に再度の呼吸苦を契機に,新規の左肺動脈塞栓症の発生が発見された.子宮筋腫による下大静脈圧排が生じ,反復する血栓形成,肺動脈塞栓症に至ったと考えられた.婦人科コンサルトとなり,全腹腔鏡下子宮摘出術を施行した.子宮重量は1,360 gであった.術後に経食道心臓超音波検査を施行し卵円孔開存と診断され,脳梗塞の原因が奇異性脳塞栓症との診断に至った.
 子宮筋腫は良性疾患であるが,増大により下大静脈圧排を生じて深部静脈血栓症を誘発しうる.また,卵円孔開存は診断されていないことも多く,奇異性脳塞栓症を生じうるため致命的病態を惹起する可能性がある.これより奇異性脳塞栓症は産婦人科医も認識すべき疾患であると考えられた.

Key words:myoma uteri, deep vein thrombosis, paradoxical embolism, total laparoscopic hysterectomy, transesophageal echocardiography
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