異所性妊娠のうち腹腔妊娠は非常に稀であり,様々な要因により発生する.今回,子宮筋腫核出術の既往があり,その子宮筋腫核出部位の筋層内妊娠でなく,同部位の子宮漿膜上に着床した腹腔妊娠例を示す.39歳,1妊0産.腹式子宮筋腫核出術の既往あり.他院で胚移植により妊娠成立した.妊娠5週2日,異所性妊娠の疑いで搬送された.血中hCG 1,371 IU/L,超音波検査で子宮内や両側付属器に胎囊を認めず,腹水を少量のみ認め下腹部痛も軽度であり経過観察した.妊娠6週0日,下腹部痛が増強し,超音波検査で膀胱子宮窩の血腫像を認めるのみだったが,血中hCG 6,962 IU/Lであり,部位不明異所性妊娠の診断で試験開腹した.両側付属器に異常を認めなかったが,膀胱子宮窩の子宮筋腫核出部位を完全に覆うように子宮前壁と腹膜が癒着しており,剝離すると子宮漿膜上に胎囊を認めた.妊娠部位を切除し,病理検査で腹腔妊娠を確認した.子宮筋腫核出部位に着床する異所性妊娠の機序に筋腫核出部に生じた子宮内腔から続く洞管を受精卵が通り,筋層内に着床すると報告されているが,本症例はこの洞管が子宮内腔から漿膜上まで繋がる瘻孔となり漿膜上に着床した可能性がある.子宮筋腫核出術既往がある症例に異所性妊娠を疑う場合はこの子宮筋腫核出部位の異所性妊娠の発症機序を理解し,子宮筋腫核出部位(筋層内から漿膜上まで)を含めた腹腔内の検索を行う必要がある.
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