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第57巻 第4号

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症例報告
妊娠27週で妊娠高血圧腎症に胎児母体間輸血症候群を合併し,分娩時期の決定に苦慮した1例
奈良 亮謙, 堀澤 信, 塩原 圭介, 西澤 美紀, 山本 さやか, 本藤 徹
長野赤十字病院産婦人科
関東連合産科婦人科学会誌, 57(4):581-586, 2020

 胎児母体間輸血症候群(fetomaternal transfusion syndrome:FMT)は胎児血の絨毛間腔への出血のために胎児貧血を来す疾患である.わずかな母児間輸血(不顕性FMT)は多くの妊婦で認めるが,多量の母児間輸血(顕性FMT)は稀である.我々は妊娠27週で妊娠高血圧腎症(pre-eclampsia:PE)にFMTを合併した1例を経験した.症例は28歳1妊0産で,妊娠26週5日に血圧125/84 mmHg,尿蛋白3+であり,妊娠蛋白尿のため精査加療目的で当院紹介となった.受診時の血圧は140/80 mmHg,尿蛋白は1.29 g/dayでありPEの診断で同日入院管理とした.妊娠27週6日にPE,胎児機能不全(non-reassuring fetal status:NRFS)および胎児貧血を疑い,緊急帝王切開を行った.臍帯動脈血のHbは3.0 g/dl,新生児のHbは4.0 g/dl,母体血のAFP 9,383 ng/ml,HbF 2.8%,パルボウィルスB19 IgMは陰性だった.血液型不適合を認めず,FMTによる胎児貧血と診断した.PEとFMTを合併するという報告はあまり多くないが,PEはFMTの原因となる可能性があり,PE患者の管理の際はFMTも念頭に置く管理が必要であると考えられた.sinusoidal patternを疑う所見を認めた場合は胎動が良好でも正確なMSA-PSVを測定し,胎児貧血の評価を行うことが重要である.

Key words:fetomaternal transfusion syndrome, pre-eclampsia, sinusoidal pattern
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