高齢者に偶発的に認められた卵巣明細胞境界悪性腫瘍を経験したため,文献的考察を含め報告する.
症例は82歳,2妊2産.下腹部痛の精査目的に内科で施行された腹部単純CT検査にて骨盤内腫瘍を指摘されたため当科紹介となった.骨盤単純MRI検査にて右付属器領域に8 cm大の充実性腫瘍を認め,右卵巣線維腫の術前診断で両側付属器切除術を施行した.病理組織学検査にて右卵巣腫瘍は線維腫と診断されたが,左卵巣割面に術前に指摘されなかった2 cm大の充実性腫瘍を認め,左卵巣明細胞境界悪性腫瘍FIGO IA期と診断された.術後治療を行わずに経過観察中であるが,術後2年の経過で明らかな再発を認めていない.
卵巣明細胞境界悪性腫瘍は予後良好であると考えられているが,間質浸潤を伴う症例での再発の報告があるため,摘出標本の全割にて間質浸潤の有無を検索する必要がある.また,画像診断にて骨盤内に充実成分を含む腫瘍を認める場合は,稀ではあるが卵巣明細胞境界悪性腫瘍も念頭におく必要がある.その際は,子宮内膜症の既往の確認が診断の一助となり得る.
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