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第58巻 第1号

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症例報告
腹腔内出血により異なる経過を辿った成人型顆粒膜細胞腫の2例
小林 梓, 西村 俊夫, 東 杏莉, 青木 宏, 片貝 栄樹, 伊藤 郁朗
国立病院機構高崎総合医療センター産婦人科
関東連合産科婦人科学会誌, 58(1):93-99, 2021

 成人型顆粒膜細胞腫(Adult granulosa cell tumor:AGCT)は卵巣癌の5%以下と稀な疾患である.エストロゲン分泌による不正性器出血,月経異常での発症が周知されているが,急性腹症での発症の報告も散見される.今回,腹腔内出血による急性腹症を来した2例を経験したため報告する.症例1は82歳,数か月前から腹部膨満感を自覚していた.下腹部痛,発熱を認め,卵巣腫瘍破裂の疑いで当院転院となった.骨盤内腫瘍は卵巣腫瘍と考えられた.転院後は貧血の急激な進行はなく,骨盤腹膜炎を併発していたため感染に対する治療後に手術を施行した.病理結果は成人型顆粒膜細胞腫IIIC期であった.術中所見から腫瘍破裂による腹腔内出血が契機となり骨盤腹膜炎を来したと考えられた.症例2は65歳,下腹部痛と嘔吐のため当院救急外来を受診した.CTで卵巣腫瘍破裂が疑われ,持続的な腹痛と貧血進行を認めたため緊急手術とした.腫瘍被膜からの持続出血を認め,病理結果から成人型顆粒膜細胞腫IC2期と診断した.AGCTによる急性腹症では,腫瘍内容漏出による腹膜刺激症状のみで経過が緩徐な場合もあるが,腫瘍からの持続出血により急激な経過を辿ることがある.卵巣病変の良悪性の鑑別や子宮内病変の精査も必要な病態ではあるが,AGCTによる急性腹症を疑った場合には腹腔内出血に伴った急変の可能性を考慮した対応が必要である.

Key words:Ovarian Cancer, Granulosa cell tumor, Acute Abdominal disease
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